黍離
(しょり)

作品名  黍離
収載書名 『詩経』「国風・王風」 
訳者名  白川静
訳書名 『詩経国風』(『東洋文庫』518)
刊行年代  1990
 その他  流浪する人の嘆きを歌う。
 
彼黍離離
彼稷之苗
行邁靡靡
中心揺揺
知我者
謂我心憂
不知我者
謂我何求
悠悠蒼天
此何人哉

彼黍離離
彼稷之穂
行邁靡靡
中心如酔
知我者
謂我心憂
不知我者
謂我何求
悠悠蒼天
此何人哉

彼黍離離
彼稷之実
行邁靡靡
中心如噎
知我者
謂我心憂
不知我者
謂我何求
悠悠蒼天
此何人哉
 
 
彼の黍
(しよ) 離離たり
彼の稷
(しよく)これ苗(べう)
行き邁
(ゆ)くこと靡靡(びび)たり
中心揺揺たり
我を知る者は
我が心憂ふと謂ふ
我を知らざる者は
我何をか求むと謂ふ
悠悠たる蒼天
此れ何人ぞや

彼の黍 離離たり
彼の稷これ穂いづ
行き邁くこと靡靡たり
中心酔ふが如し
我を知る者は
我が心憂ふと謂ふ
我を知らざる者は
我何をか求むと謂ふ
悠悠たる蒼天
此れ何人ぞや

彼の黍 離離たり
彼の稷これ実あり
行き邁くこと靡靡たり
中心噎
(むせ)ぶが如し
我を知る者は
我が心憂ふと謂ふ
我を知らざる者は
我何をか求むと謂ふ
悠悠たる蒼天
此れ何人ぞや
 
 
(きび)はよく実り
(たかきび)は苗がのびる
旅ゆくははてしなく
心はゆれにゆれる
私を知る者は
心憂えるかという
私を知らぬものは
何を求めてかという
はるかなはるかな空よ
これはいかなる人なのか

黍はよく実り
稷は穂がのびる
旅ゆくははてしなく
心は酔うようにゆれる
私を知る者は
心憂えるかという
私を知らぬものは
何を求めてかという
はるかなはるかな空よ
これはいかなる人なのか

黍はよく実り
稷は実がみのる
旅ゆくははてしなく
心はむせびなげく
私を知る者は
心憂えるかという
私を知らぬものは
何を求めてかという
はるかなはるかな空よ
これはいかなる人なのか
 
 詠いこまれた花  キビ(黍・稷)、一説に稷はコーリャン



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